1994年ノースリッジ地震災害調査報告11章(日本建築学会)  1996年3月 1996年3月5日

著者:藤原薫 寺岡勝(フジタ) 関嘉男

アメリカ、カリフォルニア州サンタモニカ市において地震被害を受けた、16階建て鉄筋コンクリート造共同住宅(フジタUSA所有)の地震被害状況と補修および補強計画について報告する。私にとっては、初めての地震被害調査の経験であった。阪神淡路大震災は、まさにこの一年後の同じ日に起きている。偶然とは言え、何かを感じさせる。
関氏(現関建築研究所所長)が地震被害発生後すぐに現地入りし、私がその後の現地と本社間での技術的なサポートを解析面で、寺岡氏が被害後の部材の剛性評価面で行った。関氏の要請によって、私と寺岡氏は現地の状況を確認するために3月に2週間ほどサンタモニカ市を訪れた。私にとっては新婚旅行以来の14年ぶりの海外旅行であった。視察を通して建物の地震被害について知見を広げると同時に、アメリカの自由さや裕福さを感じた旅行でもあった。この時、とても快活な忽那氏(当時フジタUSA副社長)に出会い、大変親切にしていただいた。よい思い出である。
本報告は「1994年ノースリッジ地震災害調査報告」(日本建築学会)の中で詳細に渡って、紹介されている。
(補足  2005年1月1日)
柱のせん断破壊によって、柱が広い範囲で大きくたわみ床を支えきれなくなっているのを目の当たりにした。柱には大きな空洞があり、主筋は大きく座屈していた。このような軸力の再配分については、等価線形解析によって推測したわけであるが、今日でもこのような鉛直荷重の再配分を適切に追跡できる非線形解析手法が開発されているわけではない。柱のせん断破壊後の鉛直支持能力の低下と鉛直方向の10数cmに及ぶ大変位を表現できる解析技術の開発を願う。

(以下抜粋)
1994年1月17日にロサンゼルスにおいて大地震が発生し,直ちに現地からサンタモニカ地区に立つ「シャンペンタワー」の震害発生の連絡が飛び込んだ.早速2日後の1月19日に現地入りし,現地スタッフと協力して被害調査および今後の対策立案に当たった.建物の被害状況を把握すると同時に入居者に避難勧告を行った.間を置かずにサンタモニカ当局の調査が実施され,危険建築物を示す赤紙が入口に貼られ直ちに立ち入り禁止となった.
建物外部に面した破壊の著しい柱が引き金となる崩壊を防止するために,それらの柱際に鉄骨による支柱を施すこととして,直ちに支柱の設計と鉄骨の手配を行った.仮設工事に従事する作業員達が作業中に建物が崩壊するのではと心配することに配慮し,更に建物の外側から4本の支柱を設置し彼らに大きな安心感を与えた.
これらの仮設工事と併行して,住戸内の被害調査を進めるとともに目視でも確認できる震害によって生じた床の鉛直変位を測定した.その結果,住戸内の構造体には柱周りの床に生じた曲げひび割れを除いて被害が軽微であることが確認され,外部に面した被害柱部分の最大鉛直変位も50mm以内と推定され,これらの柱を支えている床や梁も大部分は降伏耐力以内であることが推測できた.
当然,これらの推定や推測は,建物の構造図面と部材の被害状態に基づいたパラメトリックなシミュレーション解析による判断であった.
これらの結果をもとにして建物の所有者と対策を協議し,経済的理由も含めて建物の解体は考えず補強の上継続的使用をすることを決心した.まず補修工事を行った上で耐震性能の向上をねらった補強工事を行うことを決心した。これらを決定する間にも余震が断続的に生じたため,建物の被害を助長する水平変位を制御する目的で鉄骨ブレースを仮設的に配置した.
建物の補修および補強工事に対する構造設計は,原設計を行った現地の設計事務所との間で当初進めていた.しかし建物の被害責任に関するもつれから,別の設計事務所に業務を再依頼することが生じたり,補強工事後の建物の運営計画およびサンタモニカ市の行政的な規制などに対する解決策の追求,工事計画の技術的確認に対する打合わせなどを度々行わざるをえなく1年以上の日数を要してしまった.1995年3月を目途に補強工事を開始する予定で作業を進めたいたが,現在新規テナントによる事業の計画および折衝を進めている段階で,着工には更に時間を要する状況である.

建物の構造形式は桁行方向がフラットスラブ構造であり,張間方向は両妻面に耐力壁を有するフラットスラブ構造である.耐力壁は中央に開口部を有している.使用コンクリート強度は最大値は350kg/m2であり,最近の日本の同規模の建物に比べてかなり高い強度である.

建物の概要(Summary of Building)

建物名称:シャンペンタワー
住所:100 Ocean Blvd. Santa Monica,CA 90406
適用規準:1967年 UBC規準
設計および建設時:1969年設計,1970年着工(推定)
設計者:DMJM
基準階床面積: 1,300m2
延床面積:34,150m2
規模:地上16階,地下3階
構造種別:鉄筋コンクリート造
構造形式:鉛直荷重抵抗システム フラットスラブ構造
スラブ厚:2階,R階床厚=360mm,3~16階床厚=240mm
水平荷重抵抗システム
桁行方向:フラットスラブ構造+純ラーメン構造(壁梁)
梁間方向:フラットスラブ構造+有開口連層壁(両妻壁)
壁厚:200~610mm
基礎:直接基礎 G.L.-10.0 m 地盤:礫混じり粘性土
用途:集合住宅,駐車場(地下)
軒高:GL+ 47.7 m
基準階高:2.85 m
使用材料:①コンクリート:
柱,壁:普通コンクリート 比重 ρ=2.4t/m3
地下階~3階 Fc=350 kg/cm2(5000psi)
4階~16階 Fc=280 kg/cm2(4000psi)
フラットスラブ:軽量コンクリート 比重 ρ=1.8t/m3
全階    Fc=280 kg/cm2(4000psi)
②鉄筋:
降伏点 fy=4200 kg/cm2(Grade 60,ASTM 432)

写真提供 関 嘉男

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