下部構造に制震システムを有する単層円筒ラチスシェル構造の応答性状 2007年9月5日

(鋼構造論文集第14巻第55号 2007年9月)

著者:山田聖志(豊橋技術科学大学),松本幸大(米子工業高等専門学校),齋藤英二

[研究の背景]
鋼管やH形鋼を構成部材とする単層円筒ラチスシェル構造を有する空間構造物は,教育施設体育館などに数多く建設されている。このような空間構造物は,兵庫県南部地震や新潟県中越地震の際に見られるように,大地震時の避難場所や救援のための施設として利用される期待が大きいことから,過大な地震入力に対しても十分な耐震性能を確保しておくことが必要である。しかしながら,現状の空間構造物の耐震規定は,通常の層状構造物に比して,その地震応答性状が考慮されたものではなく,耐震設計や耐震性能評価を合理的に行うためのデータ収集が必要である。一方で近年,極めて稀に発生する地震に対しても構造物の機能を損なわないよう,構造物に地震エネルギ吸収機構を設置する免制震技術に関する開発・研究が盛んに展開されている。

[単層円筒ラチスシェル構造の研究の背景]
本研究で対象とする単層円筒ラチスシェル構造を有する空間構造物に関しては,地震時の振動性状を定性・定量的に分析することにより、歪エネルギに注目した合理的な設計用静的地震荷重を提案し,静的解析によって最大応答軸力が近似的に推定できることが示されている。しかしながら,下部構造の水平剛性の変化や地震エネルギ吸収機構を有する場合の効果を詳細に分析した例は極めて少ない。また,シェル的空間構造物に対しては、連続体置換法を適用した多自由度の数値計算を含まない応答値予測法と耐震設計に有用な静的地震荷重設定法が提案されている。

[研究目的]
本研究では,まず,単層円筒ラチスシェル構造を有する空間構造物の詳細な応答性状分析を目的として,下部構造の水平剛性変化による地震時力学性状の変化の定性・定量的な分析を行う。次に,下部構造に履歴型の制震機構を追加した場合の応答値低減効果を調べる。尚,本論文では,単層円筒ラチスシェル構造に連続体シェル置換法を用いた静的地震荷重の適用性についても,動的応答値との比較を通して論じている。

[研究の概要]
第1章では,本研究の目的,並びにシェル的な立体骨組構造物の耐震問題に関する研究動向について述べる。第2章で解析モデルの形状,諸量の設定を行う。第3章では下部構造の水平剛性変化に伴う単層円筒ラチスシェル構造物の地震応答性状の変化を考察する。また,提案されている上部ラチス構造に連続体シェル置換法を用いた静的地震荷重設定法を本研究で用いた解析モデルに適用し,それによって求まった応答推定値と,FEMによる動的解析結果との比較を行う。第4章では,下部構造に履歴型の制震機構を適用した場合の応答値低減効果の検討を行い,第3章と同様に応答推定を行い,FEMによる動的解析結果との比較を行う。第5章で結論を述べている。

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